......提督。おはようございます。
昨晩は......その、眠れ、ましたか? やっぱり、眠れませんでしたか?
あ、あの、責めてるわけじゃ、ないですから......えと、すみません。
提督、その、謝らないでください。貴方は悪くない、のですから。お願い、ですから。
今日も......休みますか。
......了解しました。大淀さんには、伝えておきます。
......ところで、提督。薬はちゃんと飲みましたか?
抗うつ薬だけ......。ちゃんと睡眠薬も飲んでって、言ったのに。睡眠は、大事、ですから......。
え......そ、添い寝、ですか? それで提督が眠れるなら......します、けど......。
では......失礼します。
ふぅ......提督、暖かい、です。石垣、少し冷え性ですから......羨ましい。
あ......もう、眠くなってきましたか。本当は、ちゃんと夜寝た方が、いいんですけど。でも、眠いなら仕方ありません。え、頭を撫でて欲しい......? 分かりました。よし、よし......。ねむれ、ねむれ......ぁ、ふ......。
......大淀さん。わかってます、わかってますから。
その、ごめんなさい。反省してますので、許してください。
提督を寝かしつけるのに、自分も寝るなんて。いえ、あの、本当にすみません。
......はい。今日も、休ませて欲しい、と。そう仰っていました。石垣も、そうするべきかと。
......提督の交代、ですか。はぁ。
何度も断っていますが、それは認めません。現状でも鎮守府が回せている以上、それは不要だと言っています。
......大淀さん。これも何度も言っていますが、貴女が大本営直属の艦娘であっても、秘書艦には従ってもらいます。
......分かれば、いいんです。
では、執務、始めましょうか。
......よく眠れましたか、提督?
そうですか。それなら良かったです。睡眠は大事、ですから。
お夕飯、どうしますか? 食欲は......少し、ですか。何か、食べやすいものにしましょうか。
はい、かしこまりました。では石垣、作って来ます、ので。少しだけ、お待ちください。
......出来ました。食べてしまって、ください。
あ......大淀さん。おはようございます。
はい、提督は今日も......。石垣が、代行します。......大淀、さん?
......交代は、認めないと。言ったはずですが。
上から......そうですか。逆らえ......ませんか。
......。
一週、間後。
わかり......ました。
とりあえず......今日の仕事、しましょうか。
......提督。起きていますか、提督。
......よかった、起きてた。
あの、伝えなきゃ、いけないことがあります。
その......提督。三日後から......別の人が。提督として、その、交代、します。
あ、て、提督......ご、ごめんなさい、落ち着いて、ください。あ、暴れないで......っ。
すみません、急に伝えて......その、すぐに伝えなければ、と、思ったので。
それで、提督。あの、お話が......。
誰も......聞いて、ませんよね。その......聞かれると、まずい、ですので。
提督。石垣と......逃げませんか。
はい。鎮守府を抜け出して、隠れて生活、です。
大丈夫、です。住むところは、もう押さえてます。二人だけの、生活。です。
提督......お願い、です。私......提督がいないと、嫌、ですから。お願い、します。
お願い、です。石垣、提督が居ないと、駄目です、から。
提督。お願い、します。石垣と、二人だけで。お願い、ですから......。
......てい、とく?
......ごめんなさい。石垣の我儘、聞いてくれて、ありがとう......ございます。
私の全て......提督に、捧げ、ます、から。
......行きましょうか。
......提督。後悔、してませんか。
あ、え、その......ごめんなさい。石垣が聞くべきことではなかったです。すみません。
もうすぐ、鎮守府の外です。少し遠いところに、タクシーを呼んでありますので。そこまで......待ってください。あの、人......影が......。
......誰、でしょうか。すみません、石垣、見てきますので......。
......
......そん、な。
......夜回り、誰も居ないの、確認してきたのに。何でここに居るんですか......大淀さん......!
こ、こっちに来いって......嫌。私、提督に全てを捧げるって誓ったの、こんな所で捕まるわけに......いかない......!
落ち着け......? 落ち着いてるわ、だからこそ逃げなきゃ......っ。
あ、ぁ......その、ごめんなさい、大淀さん......私、どんな罰でも受けますから、提督だけは......その、見逃して、ください......。お願い、ですから......。
あの......大淀、さん......? その、どうして笑顔、なんですか。こ、怖いん、ですけど......。
......これ、は......? 書類?
餞別、ですか......? あの、大淀さん、石垣を捕まえに来たわけじゃ......え、違う......。
中身、確認しても?
......。
......その、ありがとう、ございます。そして、ごめんなさい。
......提督、着きました。
えっと......ボロボロですみません。私、人間じゃないですし、住民票ないので......契約に不都合が。それで、廃屋なんですけど......。
......探した方法は、秘密です。
それに......これ。大淀さんに頂いた、色々な公文書、です。偽造......ですけど。暫くしたら、ちゃんとした所に住めると思います......から。
......提督。急に連れ出したりして、すみません。でも、石垣に着いて来てくれて......その、ありがとうございます。
石垣、貴方と必ず添い遂げます......から。
......はい。それじゃあ......寝ちゃいましょうか。石垣......眠い、です......。
(文:真太郎)
真太郎です。ここまでお読みいただきありがとうございます。小説は初投稿です。
とある同人作家様の影響で何故か石垣ちゃんに影を落としてしまう呪いがかかってしまったのでこうなりました。ひっそりと提督無しでは生きていくことが出来なくなった可愛い石垣ちゃんがまあまあよく書けたと思っています。
逃げることで手に入るモノは本当に「安寧」でしょうか。逃げなければ「安寧」は手に入らないのでしょうか。もし仮に「安寧」だとしてそれは永遠なのでしょうか。逃げることで止められた生の時計は、永遠に「安寧」の最期を示しているのでしょうか。もしくは──