この記事を読む、艦これをやっているであろう皆さん!
どうもこんにちは unkyo(@Hentaishitenno) です。
どうやら夏イベで伊47が実装されるようですね。
伊47の筏のエピソードといい何といい潜水艦の周りには面白いエピソードがたくさん転がっています。
この記事ではその潜水艦の周辺に転がっている大量のエピソードのうちいくつかを紹介していきたいと思います。
皆さんにも潜水艦のロマンを感じて、もっと潜水艦を好きになってもらえたら、と思います。
今回は乗り物史の中での潜水艦エピソードを紹介していきたいと思います。
潜水艦の潜水艦たる所以
乗り物は人の移動を自由にする道具であり、空間に対する人類の闘いの跡と言っても過言ではないでしょう。
その乗り物の中でも最古に発明されたのが 舟・船 です。
つまり人類は道具を用いて水上という平面を最初に制した訳ですね。*1
そして約一万年を経て船は水中に潜るという能力を得て水中という立体をも制したという流れになります。
これは乗り物という道具の歴史において非常に画期的な進歩です。
人類は地上に降り立つ以前は樹上で立体的に活動をしていました。
樹を降り二足歩行をするように進化したのはある意味空間への敗北です。それが数百万年の時を経て、知性を以て再び空間に勝利する。*2
そうです、
潜水艦は人類史上、初めて3次元移動を可能にした乗り物なんです。
本来、そういう意味では潜水艦は船と一線を画する乗り物であり、
船の一種として扱えるものではないでしょう。
船を定義し直してみる
しかし、潜水艦は船の一種です。納得いくように船というものを定義してみましょう。
浮力に着目してみるも……
空気中や水中などの流体の中では物体は全方向から圧力を受けています。
その圧力に物体の上と下とで差があることから上方向への力として浮力がはたらきます。
船が浮くのは浮力より船体の重さが小さいということですね。
そして潜水艦は何らかの方法で船体の重さを調節し、浮力より重ければ沈み、軽ければ浮かぶと言うことですね。
それを空中で行えば気球船だったり、飛行船だったり、風船だったり。
船という言葉が空中を移動する乗り物にもついていることは面白いですね。
船と言うものを定義するならば、水上を移動する乗り物と言うよりは浮力を使用する乗り物と言った方がしっくりきませんか
有人宇宙機のことを宇宙船と言うじゃないかって?
そうですねぇ、新しい乗り物は大体、船に分類されるみたいですね。
流石人類最初の乗り物と言うだけあり、後世に与える影響が非常に大きいです。
宮崎駿が「風の谷のナウシカ」で飛行機を船として扱っていても違和感を抱かないのにもその大きさを感じます。
この定義はそんなに上手く行かなさそうなので却下して次に進みたいと思います。
なぜこう定義をしたくなったかを一応、説明すると潜水艦が発明されたのとほぼ同時期に気球が発明されていたことに面白さを感じたからですね。人類初の3次元移動する乗り物がほぼ同時期に、同様の物理現象を利用していたのは偶然にしてはよくできているなと思った次第です。
(1776年に潜水艦タートル号が実戦投入されたことと、1783年にモンゴルフィエ兄弟が有人熱気球飛行に成功したことが時代的にかなり近いことに気が付いてこの記事を書き始めました。)
とりあえず次に進みましょう。
宇宙よりも遠い場所へ
潜水艦が乗り物である以上、空間との闘いは続きます。潜水艦が潜水するからに目指す場所はそう、宇宙よりも、南極よりも遠い場所、深海です。
なぜ宇宙よりも遠い?
1気圧は面積1cm2あたり約1kgfの力を受けるということです。
海面上では1気圧の力が空気によって加えられています。
日本人成人の体の表面積は約1.6m2(16000cm2)
つまり、16000cm2×1kgf/cm2=16000kgf
1気圧中では約16tの力が体に加えられています。
体の内側からも1気圧の力がはたらいているので普通にしていれば問題がないのですが。
水中での圧力、水圧は10m潜るごとに1気圧増えていきます。
例えば、100m潜ると空気の1気圧と水の10気圧とを合わせて11気圧の圧力を受けます。
これは全身で176tの力を受けているということです。体の内側からは 16t分の力しか加えられていませんので、160tの力で肺や内臓がペシャンコにされてしまいます。
潜水艦にも同じことが言えます。
ペシャンコにならずにより深く潜るにはどうすればいいのでしょうか?
一つの方法として単純に表面積を減らせばよいです。
なのでサイズ自体を小さくして、体積に対して表面積が最小になる、球体にすればより深く潜れることになります。
浮上できない……
この方法を実践した結果生まれたのが 潜水球(Bathysphere)です。
潜水球は母船からケーブルで吊るされた状態で潜水しケーブルを巻き上げることで浮上します。
こうせざるを得ない理由は浮力を得る方法が1928年当時思いつかれなかったということがあります。
通常の潜水艦は船体に水を入れて潜水し、圧縮空気で水を排出して浮上します。
この方法では水圧が高くなると圧縮空気の圧力を水圧が上回り水を排出することができません。
気球に学ぶ
スイスの物理学者オーギュスト・ピカールは潜水艦を気球と同様に浮力で3次元移動を可能にする乗り物と捉え直して、新たなタイプの潜水艦を発明しました。
気球は気嚢で浮力を得て、人が乗るゴンドラ部分を吊るして飛びます。
また高度の調節は砂袋などの重しを捨てることで行います。
この二つを主に取り入れてオーギュスト・ピカールはギリシア語の「bathys(深い)」と「skaphos(船)」を合わせ、Bathyscaphe(バチスカーフ)と名付けました。
バチスカーフは海水よりも密度の小さいガソリンを浮力材として使用し、船体に圧縮に強いガソリンを満たすことで水圧で潰れるのを防ぎつつ浮力を得て、船体に人が乗る耐圧球を吊るすという設計になっています。
潜水時には鉄球の重しを電磁石で固定し、電磁石を切ることで重しを捨て、浮上します。
この仕組みは現代の深海調査艇の礎となりました。
地球で一番深い場所、チャレンジャー海淵
オーギュスト・ピカールは1953年にバチスカーフ・トリエステ号を製造し、
トリエステ号は1960年1月23日、オーギュストの息子ジャック・ピカールと海洋学者のドン・ウォルシュを乗せてマリアナ海溝南部の最深域チャレンジャー海淵の海底に到達し、地球で一番深い場所に到達した最初の潜水艦となりました。
潜降に約5時間かかり、海底に20分留まり、浮上に3時間15分かけた一大潜水です。
その潜水記録は10,911mと2019年まで破られることはありませんでした。
この業績は潜水を本質とする潜水艦を語るには外せないものです。
1万mもの深海に到達した人類はまだ5人もいないのではないでしょうか。
それでも、深海という前人未到の空間への初戦を飾ったということにしておきたいですね。
ちなみに
オーギュスト・ピカールは気球FNRS-1を開発し、自らFNRS-1に乗り込み高度15,780mに達し人類初の成層圏到達者となっています。
オーギュスト・ピカールの孫のベルトラン・ピカールは気球による世界初の無着陸世界一周を達成しています。
親子三代で世界記録まみれですね。
私は潜水艦と気球のつながりをここにも感じずにはいられません。
おまけ
スクロールして深海に挑戦する気分が味わえます。
次回は潜水艦と音楽についてです