京都大学艦これ同好会 会員の雑記ブログ

京都大学艦これ同好会は、艦これを通じてオタクとの交流を深める緩いコミュニティです。普段はラーメンを食べています。

米海軍のSLBM核弾頭史①

初めまして! 原子力の軍事利用が大好きな、京艦同5期生・東北大学艦これ同好会会長のひゅうんです。

 

京都大学艦これ同好会5期生で、東北支部としての役割がある東北大学艦これ同好会の会長を勤めている東北大学工学部新3回生です。

東北大学などの仙台付近の大学に通う学生さんで、艦これに興味のあるという方は東北大学艦これ同好会に興味を持っていただければと思います。

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ところで…

みなさん、一度は米海軍のSLBMの核弾頭のことが気になって、夜も眠れなくなったことはありますよね?

 

そこで、米海軍のSLBM弾頭を時系列順にまとめてみたいと思います!

今回はその一回目として、退役した核弾頭を取り上げたいと思います!

 

※リンクは出典、もしくは研究所公式サイトに飛びます

 

そもそもSLBMとは?

SLBMとは、Submarine-Launched Ballistic Missile(潜水艦発射弾道ミサイルのことを指す言葉で、その名の通り、潜水艦から発射される弾道ミサイルになります。2022年現在、アメリカでは核弾頭を持つSLBMを搭載した戦略ミサイル原子力潜水艦(SSBN)を14隻運用しており、潜水艦の秘匿性を活かした生存性の高い核戦力として、ICBM戦略爆撃機と共に核戦力3本柱の一つを担っています。SSBNは、有事の際、直ちにミサイルを発射できるように必ず数隻が海中で待機(=戦略抑止パトロールしています。これは、1960年に最初の戦略パトロールを開始してから2022年現在まで継続しています。

 

オハイオ級SSBN File:USS Maine (SSBN-741).jpg - Wikimedia Commons より

 

 

 

アメリカ初のSLBM弾頭、W47

SLBMの実用化を急いだアメリカは、最初のSLBMであるUGM-27A Polaris A1W47弾頭を開発しました。まずは緊急配備型であるEC-47(Emergency Capability)を生産、その後W47Y1/2が交代で配備に就きました。核コンポーネントの開発は、現在ローレンス・リバモア国立研究所(LLNL)として知られるカリフォルニア大学放射線研究所(UCRL)が、非核コンポーネントの開発はサンディア国立研究所(当時は国立ではなかった)が担当しました。

W47/Mk1 File:W47.jpg - Wikimedia Commons より

Y2の核出力は、米海軍の単発のSLBM核弾頭としては最大のものになります。この核弾頭は、当時まだ大きかった熱核兵器を小型軽量化した画期的な核弾頭でしたが、起爆用の原爆の安全性と信頼性が低く4分の3は不良品でした。この問題に対処するため、弾頭は何度も改修を必要とし、後に全てのW47弾頭はW47Y2 Mod 3に改修されました。この弾頭は、1974年にPolaris A2と共に退役しました。

 

 

"クラスター弾頭”のW58

  • 搭載SLBM:UGM-27C Polaris A3
  • 推測核出力:200kt
  • 搭載再突入体:Mk2(MRV
  • 開発研究所:UCRL/サンディア研究所

W58を3発搭載したPolaris A3 File:Polaris-a3.jpg - Wikimedia Commons より

もはや失敗作と言っていいW47/Mk1を置き換えるために、UGM-27C Polaris A3とこれに載せるW58弾頭Mk2再突入体が開発されました。この弾頭は200ktの核出力があるとみられ、単発での威力が低下するものの、1つのPolaris A3に3発弾頭を載せて火力を補っています。複数個弾頭を載せて、同一目標を攻撃するシステムは、"クラスター弾頭"と呼ばれ、後に、Multiple Reentry Vehicle(MRV)と呼ばれるようになりました。1964年に登場したこの弾頭とSLBMによって、米国は実用的なSLBM戦力を手にしたと言っていいでしょう。この弾頭は、1984年にPolaris A3と同時に退役しました。

 

 

最初のMIRV化SLBM弾頭:W68

  • 搭載SLBM:UGM-73 Poseidon C3
  • 推測核出力:40-50kt
  • 搭載再突入体:Mk3(MIRV
  • 開発研究所:UCRL/サンディア研究所

W68/Mk3 https://www.osti.gov/opennet/servlets/purl/16341737.pdfより

W68/Mk3は、Poseidon C3用に開発されたW58/Mk2の後継弾頭です。Polaris A3の後継SLBMであるPoseidon C3が一基に搭載できるW68/Mk3弾頭の数は、最大14発! さらに、これらの弾頭はそれぞれ個別にターゲットを設定できる機能を備えていました。この機能をMultiple Independently-targetable Reentry Vehicle(MIRV)と呼びます。また、再突入体の形がそれまでの円柱と円錐台の組み合わせから、1つの円錐形に進化しました。射程はPolaris A3と同程度ですが、大きなペイロードと個別ターゲット機能により作戦能力は大きく向上しました。W68弾頭は1970年に配備され、Poseidon C3と共に1992年に退役し、1993年に解体が完了しました。

 

 

 

おわり

いかがでしたでしょうか!!!以上が退役した米SLBMの核弾頭達です。この時代のSLBMは進歩が著しくて面白いですね。次回は現在も配備に就いているSLBM核弾頭を紹介したいと思いますので、次回もよろしくお願い致します!