こんにちは,というよりはじめましてでしょうか.Cuと申します.嫁艦は浜風で着任は2019,12,21の初心者提督です.
組長からブログを書けという圧を感じ,何か書いてやろうと考え,京大艦これ同好会というのですから,京都大学特色入試の話をしてやろうと思いました.ちなみに私は2020年理学部特色入試を受験しており,今回紹介する問題は実際に受験生として解いた問題となります.
問題概要(京大理学部特色入試2020第1問)
著作権的な問題が生じると困るため,問題の概要のみを述べます(そもそも問題文をほとんど忘れている).詳しく知りたければ,大学への数学等を読んでください.また,以下数学の文章を書く手癖で常体となります.ご了承ください.
で定義された連続関数はであり,で何回でも微分可能な関数であって,
を満たすものとする.
この関数において,で定義された連続関数を
とする.
- は定数値を取ることを示せ.
- 各に対して,を求めよ.
- は収束する.この無限級数の収束値を小数第1位まで求めよ.
解法
計算して終わり!
小問1
として関数を定めると,を満たす.さて,
の両辺を微分しよう.すると,
が得られる.次にの両辺を微分し,関係式を求める.
上記の式を辺々微分して,
仮にならば,が定数関数になってしまい,それは定義と矛盾する.ゆえにで,両辺をで割ると,
となり,示された.
小問2
小問1で得られた関係式の両辺を回微分すると,
が得られ,することによって,
が得られる.及び,小問1の式を用いてを踏まえれば,が奇数のときはとなる.偶数のときはのとき,
が得られる.まとめると,
小問3
偶数項だけを代入すればよい.
となる.ここでにから順に整数を代入して,値を見ていく.
のとき
のとき
のとき
これまでを足したものをとおくと,,
となる.
のとき
であるため,
求める値をとおくと,
であるため,求めるものはとわかる.
元ネタ
読者が理系大学生ならば,問題を見た瞬間,問題におけるがであることは容易にわかる.また,の定義式を見れば,これが展開をしていることもわかるであろう.実際にを代入すると,
となる.また,本問の手法でののマクローリン展開は有名な手法である.ある意味で知識問題とも呼べる問題が京大特色入試で出題されたことには驚いた.余談だが,この年の特色入試は第2問も非常に解きやすい問題であるため,(ないと思うが)これを受験生が見ているならば是非腕試しに解いてみてほしい(個人的には第3問が好きなので,暇な読者は解いてみてほしい).
本題に戻ろう.
今回の問題は,のマクローリン展開に,を代入した級数の問題である.これが分かっていれば,無限級数はに収束することがわかり,答えが即座にわかってしまう(実際はちゃんと途中の論証をしないと駄目であろうが).
勘のいい読者なら,こうしたマクローリン展開の手法で,円周率(の2乗)の近似計算ができるのではないかと察するのではないだろうか.実はこれと本質的に同じ手法が日本においては江戸時代に存在していたのだ.
このブログのタイトルにも現れている建部賢弘(たけべかたひろ)は江戸前期の和算家である.関孝和の門人となり和算を学んだ建部は,円周率の級数展開・近似計算において多大なる業績を残している.その著書『綴術算経(てつじゅつさんけい)』において,「零約術」という手法を用いてに相当するものを計算している.ちなみに『綴術算経』は1722年に書かれたものであるが,のマクローリン展開が西洋で計算されたのは1737年ごろと言われている(これはオイラーの業績である.またお前か).建部の功績のみならず,江戸時代の和算は,当時の西洋の数学に匹敵するほど進んでいたという.行列の概念など,既に江戸時代には存在していたことは聞いたことがあるかもしれない.日本において,明治・大正期から高木貞二(『解析概論』にはお世話になった人も多かろう)といった大数学者が生まれたのは,和算による数学的下地が存在していたからかもしれない.
そういえば私が特色入試を受けたと最初に述べたが,今東京で大学生活をしている.つまりはまぁ,そういうことだ.
宣伝
京大艦これ同好会は,京大生のみならず,私のような京大落ち大学生でも入会できる同好会です.是非入会してみてはどうでしょうか.
次回予告
次回は「Machinの公式」という非常に美しい数式の考察を行いたいですね.自分で首を絞めるな.
その他
誤字等は
ℂ𝕦 (@math_ter0713) | Twitter
までお願いします.