京都大学艦これ同好会 会員の雑記ブログ

京都大学艦これ同好会は、艦これを通じてオタクとの交流を深める緩いコミュニティです。普段はラーメンを食べています。

艦これアニメ2期解説

そそぐです。

 

艦これアニメ二期が存在することをご存じでしょうか。

dアニメストアでの配信が今月末*1で終わることを知り、急いで視聴しました。マイナーなアニメは配信終了すると次の配信がいつになるか分からないため、注意が必要です。

 

感想ですが……とても印象的でした!!

全8話で短く、台詞が少ないうえに、比喩的で示唆に富んだ描写が多かったため、大変難解でした。解釈は様々あると思いますが、解説してみようと思います。

 

未視聴の提督が多いかと思われますので、以下ネタバレ注意とさせていただきます。

主人公の正体

本作品は、かなり特殊な世界観で描かれています。その代表的な点を以下にまとめてみます。

  • 戦っている部隊(艦娘)が女性のみで構成されている。
  • 体が大きい人間と、体が小さい人間がいる。
  • 敵が海からやってくる。

お気づきでしょうか。

艦娘は、ゼントラーディなのです。

このことを示す象徴的な描写があります。

第4話にて、軍役から外れた山城は、「時雨、そうじゃないわ、私も幸せなの。」と言います。これは、戦闘というゼントラーディとしての存在理由を奪われた扶桑と山城が、時雨たちを気遣った言葉です。大変感動的であり、私も言葉を失いました。

 

敵との出会い

海は宇宙の比喩表現であり、敵は侵攻してくる異星人と考えることが適当でしょう。

第4話の冒頭、病室で目を覚ました時雨が、敵を思い出してPTSDを起こしているシーンがあります。この場面にある2輪のヒガンバナは第3話の戦闘で登場した2人の敵の象徴となっています。寄り添い、愛を語りあいながら戦っていた敵の姿は、恋愛という価値観のない時雨に強烈なショックを与えたのです。

繰り返し描写された2輪の彼岸花は、愛を語り合う敵の様子を象徴的に描写したものであり、第3話では、戦闘中に愛し合う敵に気付いた艦娘たちが衝撃を受ける様子が描かれています。

 

葛藤

第1話から繰り返し描写される村雨の姿は、時雨の葛藤の象徴です。時雨が村雨に消化できない感情を抱いていたことに加え、村雨鎮守府の外の戦闘のない世界へ、笑いながら去って行きました。蓋をしてきた未知の感情や価値観が、敵との出会いによって思い出されているのです。

第7話では、「ぼくもユキ(カゼ)や最上と一緒に(戦闘に)行きたかったな。」と発言します。これは、時雨の中に俯瞰的な視点が現れたことを象徴しています。戦闘を欲している自己を客観的に認識し、無意識のうちに言葉として表現されたのです。

 

成長

時雨が改三に改造される課程は、時雨の成長を表すかなり直接的な比喩表現でした。

鎮守府を去った村雨や扶桑、山城のみならず、戦友たちのことを考えています。他者を強く意識していることが窺えます。他者に抱く感情を客観的に認識し、戦闘を失った生活に対して思いを馳せるようになります。

他の艦娘も、戦友への意識が強くなっている点が描写されています。

叫び声を上げながら未知に立ち向かう時雨は、ついに「愛」を理解し、涙を流します。

 

新しい世界

艦娘たちは、戦闘のない生活を楽しみます。

未知の価値観を受け入れ、そこに生きがいを見いだしているのです。町並みの変化は、時雨たちのみならず、惑星中のゼントラーディに価値観の変化が起こったことの現れと言えます。

時雨たちの外見に変化がみられないため、第8話の戦闘から新しい世界に至る期間が短いことが分かります。新しい世界に敵の姿は見られません。敵は撤退しています。前線を押し上げ、基地までたどり着いた敵は、ついに文化的侵略を達成し、撤退しました。

敵の目的は、戦闘民族であったゼントラーディに価値観の変化を起こし、戦闘を行わない民族へとつくりかえることでした。目的達成と戦闘の終了は同じものなのです。愛を知った艦娘は戦闘を止め、鎮守府を去ります。「海の底に沈んでしまうかもしれない」という発言が第5話にありますが、負傷によって去るものがいても、作中で戦死した艦娘はいません。戦闘中に負傷しても完治が早く、作中に描写はみられませんが、入渠すれば負傷は治るものと考えると自然です。

作中における包帯の描写は精神的負傷にあたります。敵による価値観への侵略度です。「沈」むとは、鎮守府を去ること、つまり戦闘をやめ、幸せを他に見いだすことを示しています。すると、扶桑と山城が鎮守府を去るときに時雨に伝えた「時雨、そうじゃないわ、私も幸せなの。」という言葉は、山城の優しさであると同時に山城の本心でもあることがわかります。山城の優しさも、山城が愛を知ったために芽生えた感情だと考えられます。

ゼントラーディの語彙力のなさに抗い、自身の感情を表現しようと努力し、新しい世界での生き方を模索する時雨の姿は印象的です。「いつか、いつか、きっと、会おうね、今度は静かで青い、そう、いつか、あの海で、あなたと」という言葉の前向きさに心打たれました。

 

おわりに

艦これアニメ二期は、「デカルチャー」をゼントラーディの目線から描いた野心的な作品でした。dアニメストアで見たい方はお急ぎください!!

*1:dアニメストアでの配信終了は2024/4/30